時間外・休日労働協定(36協定)を締結し届け出た場合でも、1日について延長できる労働時間が2時間を超えてはならないとされる業務に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
衛生管理者の「有害業務」とは:試験科目名と選任ルールでの意味
第一種衛生管理者の試験科目にも、衛生管理者の選任ルールにも「有害業務」という言葉が出てきます。ところが、場面によって指している範囲が違います。試験の「有害業務に係るもの」、選任の「労働基準法施行規則第18条の業務」、第一種が必要な「業種」、特殊健康診断の「政令で定める有害な業務」。4つを分けておけば、試験の選択肢で迷わなくなります。
試験科目の「有害業務に係るもの」の範囲
結論
選任ルールで「有害業務」と言えば、多くは労基則第18条の10種類の業務のこと。専任の衛生管理者や衛生工学衛生管理者が必要かどうかに使います。第一種が必要かどうかは業種で決まり、特殊健診の対象は安衛令第22条で別に決まっています。
第一種衛生管理者の試験は、労働衛生と関係法令がそれぞれ「有害業務に係るもの」と「有害業務に係るもの以外のもの」に分かれています。範囲は告示の衛生管理者規程(昭和47年労働省告示第94号)で決まっていて、第二種の免許を持つ人が受ける特例の試験の範囲を見ると、有害業務の部分がよく分かります([厚生労働省])。
- 労働衛生:作業環境要素(有害業務に係るものに限る)、職業性疾病、作業環境管理(有害業務に係るものに限る)、作業管理(有害業務に係るものに限る)、健康管理(有害業務に係るものに限る)
- 関係法令:労働基準法・労働安全衛生法とその命令の有害業務に係るもの、作業環境測定法・じん肺法とその命令
ここでの「有害業務」は、特定の条文の定義ではなく、化学物質、粉じん、騒音、放射線、異常気圧などの有害な因子にさらされる業務全般を指す使い方です。勉強の分け方は労働衛生(有害業務)の覚え方と有害業務の関係法令の覚え方で解説しています。
労働基準法施行規則第18条の業務
選任ルールで使う「有害業務」は、労働基準法施行規則第18条の業務です。もともとは、時間外労働の延長を1日2時間までに制限する「健康上特に有害な業務」(労働基準法第36条第6項第1号)を定めた条文です([e-Gov])。
| 号 | 業務 |
|---|---|
| 第1号 | 多量の高熱物体を取り扱う業務・著しく暑熱な場所の業務 |
| 第2号 | 多量の低温物体を取り扱う業務・著しく寒冷な場所の業務 |
| 第3号 | ラジウム放射線・エックス線その他の有害放射線にさらされる業務 |
| 第4号 | 土石・獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所の業務 |
| 第5号 | 異常気圧下の業務 |
| 第6号 | 削岩機・鋲打機等で身体に著しい振動を与える業務 |
| 第7号 | 重量物の取扱い等重激な業務 |
| 第8号 | ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所の業務 |
| 第9号 | 鉛・水銀・クロム等の有害物の粉じん・蒸気・ガスを発散する場所の業務 |
| 第10号 | 厚生労働大臣の指定する業務 |
専任の衛生管理者・衛生工学衛生管理者との関係
労働安全衛生規則第7条第1項は、労基則第18条の業務を使って、衛生管理者の選び方を厳しくしています。
- 専任(第5号):常時1,000人を超える事業場、または常時500人を超え、坑内労働か労基則第18条の業務に常時30人以上を従事させる事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任にします
- 衛生工学衛生管理者(第6号):常時500人を超え、坑内労働か労基則第18条の第1号・第3号・第4号・第5号・第9号の業務に常時30人以上を従事させる事業場では、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者から選任します
衛生工学衛生管理者の対象は、高熱・暑熱(第1号)、有害放射線(第3号)、じんあい・粉末(第4号)、異常気圧(第5号)、有害物の粉じん等(第9号)。低温・寒冷、振動、重量物、騒音は入りません。「騒音・振動・重量物・寒冷は入らない」と、外れるほうを覚えるのが近道です。人数の全体像は衛生管理者は何人から必要かの記事にまとめています。
産業医を専属にする要件(安衛則第13条第1項第3号)も似た業務のリストを使いますが、こちらは常時500人以上で、深夜業を含む業務や病原体による汚染のおそれが著しい業務なども入る、別のリストです。
第一種が必要な「業種」とは別の話
「有害業務があるから第一種が必要」と考えがちですが、条文上は業種で決まります。安衛則第7条第1項第3号イで、農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業の業種は、第一種衛生管理者免許・衛生工学衛生管理者免許などを持つ人から選任します。それ以外の業種は第二種でも選任できます。くわしくは第一種と第二種の違いへ。
就業制限・特殊健康診断の「有害な業務」
健康診断の場面では、また別の定義を使います。
- 特殊健康診断(安衛法第66条第2項):安衛令第22条第1項の業務(高圧室内業務・潜水業務、放射線業務、特定化学物質、鉛、四アルキル鉛、有機溶剤など)。くわしくは特殊健康診断の覚え方
- 歯科医師による健康診断(同条第3項):安衛令第22条第3項の、塩酸・硝酸・硫酸などのガス・蒸気・粉じんを発散する場所の業務
- 年少者・女性の就業制限:労働基準法と年少者労働基準規則・女性労働基準規則のリスト
問題文に「労働基準法施行規則第18条」とあれば選任・時間外労働の話、「令第22条」とあれば健診の話、と条文番号で切り分けるのがコツです。
本番形式の問題で確かめる
この記事の範囲から、本番と同じ五肢択一を3問。選ぶと正誤と解説が出ます(学習の記録には残りません)。
法令に基づく健康診断の実施に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
健康診断の結果の報告に関する次の記述のうち、法令上、正しいものはどれか。
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よくある質問
労働基準法施行規則第18条の業務とは何ですか?
労働基準法第36条第6項第1号の「坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務」として、労基則第18条が定める10種類の業務です。高熱・暑熱、低温・寒冷、有害放射線、じんあい・粉末、異常気圧、振動、重量物、強烈な騒音、鉛・水銀等の有害物の粉じん・蒸気・ガス、厚生労働大臣の指定する業務が並びます。これらの業務では、時間外労働で延長できる時間が1日2時間までです。
有害業務がある会社は第一種衛生管理者が必要ですか?
第一種が必要かどうかは「業種」で決まります(労働安全衛生規則第7条第1項第3号)。建設業や製造業など13の業種では第一種衛生管理者免許などを持つ人から選任し、それ以外の業種では第二種でも選任できます。個々の業務が有害かどうかで決まるわけではありません。自社がどの業種に当たるかなど個別の判断は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
深夜業は労基則第18条の有害業務に入りますか?
入りません。労基則第18条の10種類に深夜業はありません。一方、産業医を専属にする要件(安衛則第13条第1項第3号)の業務には「深夜業を含む業務」が入っています。試験ではこの違いがよく問われます。
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出典
数値・条文は次の一次資料で確認しています(確認日は本文の注記のとおり)。
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