総括安全衛生管理者、衛生管理者及び産業医に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
衛生管理者の仕事内容:法律で決まっている職務と毎週・毎月やること
衛生管理者に選任されたものの、「具体的に何をすればいいのか分からない」という人事・総務の担当者向けに、法律で決まっている職務と、毎週・毎月・毎年の流れを条文に沿って整理します。結論から言うと、軸は週1回の巡視、月1回の衛生委員会、年1回の健康診断とストレスチェックの3つで、その間に記録と改善を積み重ねていく仕事です。
法定の職務(安衛法第10条の業務のうち衛生に係る技術的事項)
結論
法律上の職務は、安衛法第10条第1項の業務のうち「衛生に係る技術的事項」の管理(第12条)と、少なくとも毎週1回の作業場巡視(安衛則第11条)。実務では、毎週の巡視→毎月の衛生委員会→年1回の定期健診・ストレスチェックと報告を回し、記録を残します。医学的な判断は産業医、労務の手続きは人事と分担します。
労働安全衛生法第12条第1項は、衛生管理者に、第10条第1項各号の業務のうち衛生に係る技術的事項を管理させるとしています。第10条第1項各号と、それを具体化した省令の事項は次のとおりです。
| 安衛法第10条第1項 | 内容 |
|---|---|
| 第1号 | 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置 |
| 第2号 | 労働者の安全又は衛生のための教育の実施 |
| 第3号 | 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置 |
| 第4号 | 労働災害の原因の調査及び再発防止対策 |
| 第5号(安衛則第3条の2) | 安全衛生に関する方針の表明、危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)と措置、安全衛生に関する計画の作成・実施・評価・改善 |
労働局の「安全衛生管理体制のあらまし」は、衛生管理者の職務の例として次の項目を挙げています。日々の仕事に落とすときのチェックリストとして使えます。
- 健康に異常のある者の発見及び措置
- 作業環境の衛生上の調査
- 作業条件、施設等の衛生上の改善
- 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
- 衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項
- 労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
- 衛生日誌の記載等職務上の記録の整備
週1回の職場巡視
衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備・作業方法・衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません(安衛則第11条第1項)。事業者は、そのための権限を衛生管理者に与えなければなりません(同第2項)。産業医の巡視は少なくとも毎月1回(一定の情報提供と事業者の同意があれば2月に1回)で、頻度が違う点に注意しましょう(安衛則第15条)。
巡視で何を見るかは法令で細かく決まっていないので、事務所であれば、例えば照明・温度・換気・休養室・整理整頓・救急用具の場所と中身などを確認項目にすることが考えられます。事務室の基準は事務室の温熱・換気・照明、救急用具は救急処置と救急用具で整理しています。
健康診断・衛生委員会など年間の流れ
| 頻度 | やること(根拠) |
|---|---|
| 毎週 | 作業場等の巡視と、有害のおそれがあるときの措置(安衛則第11条) |
| 毎月 | 衛生委員会(毎月1回以上開催、議事の概要を労働者に周知、記録3年保存。安衛則第23条)。長時間労働者の時間外・休日労働の算定と面接指導の案内(同第52条の2) |
| 雇入れのつど | 雇入時の健康診断(安衛則第43条)、雇入れ時の安全衛生教育(同第35条) |
| 年1回 | 定期健康診断(1年以内ごとに1回。安衛則第44条)と、常時50人以上なら結果報告(同第52条)。ストレスチェック(同第52条の9)と、常時50人以上なら報告(同第52条の21) |
| 6か月ごと | 深夜業など特定業務従事者の健康診断(6月以内ごとに1回。安衛則第45条) |
衛生委員会では、衛生に関する規程の作成、衛生教育の実施計画、定期健康診断の結果に対する対策、長時間労働による健康障害の防止、労働者の精神的健康の保持増進のための対策などを調査審議します(安衛則第22条)。議題の準備と、決まったことの実行管理は、衛生管理者が中心になることが多い仕事です。
記録と報告
| 記録 | 保存期間 |
|---|---|
| 健康診断個人票 | 5年(安衛則第51条) |
| 衛生委員会の議事の記録 | 3年(安衛則第23条第4項) |
| 長時間労働者の面接指導の記録 | 5年(安衛則第52条の6) |
| ストレスチェック結果(同意を得て提供を受けたもの)・面接指導の記録 | 5年(安衛則第52条の13・第52条の18) |
労働局の資料が職務の例に挙げる「衛生日誌の記載等職務上の記録の整備」は、巡視の結果や指摘事項、対応状況を残しておくことにつながります。様式は法令で決まっていないので、事業場で使いやすい形を決めておくとよいでしょう。
産業医・人事との分担
- 産業医:健康診断・面接指導・ストレスチェックの結果に基づく措置、作業環境・作業の管理、健康教育・健康相談、衛生教育など、医学に関する専門的知識を必要とする事項(安衛則第14条第1項)
- 衛生管理者:衛生に係る技術的事項の管理、週1回の巡視、記録と改善の進行管理
- 人事・総務:選任報告、健診・ストレスチェックの事務手配、就業上の措置の実施、規程の整備など(事業場での分担による)
ストレスチェックでは、衛生管理者は実施者にはなれませんが、実施計画の策定や外部機関との連絡調整を担う実務担当者に指名することが望ましいとされています(ストレスチェックの覚え方)。選任の人数や期限は衛生管理者は何人から必要?で整理しています。また、事業者は衛生管理者に能力向上のための教育・講習等を行うよう努めることとされています(安衛法第19条の2)。
本番形式の問題で確かめる
この記事の範囲から、本番と同じ五肢択一を3問。選ぶと正誤と解説が出ます(学習の記録には残りません)。
常時800人の労働者を使用する製造業の事業場(深夜業を含む業務その他の有害業務に従事する労働者はいない)の衛生管理体制に関する次の記述のうち、法令上、正しいものはどれか。
総括安全衛生管理者に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
関連する分野を練習する
よくある質問
衛生管理者の仕事は法律でどう決まっていますか?
労働安全衛生法第12条第1項で、事業者は衛生管理者に、第10条第1項各号の業務(健康障害を防止するための措置、衛生のための教育、健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置、労働災害の原因の調査と再発防止対策など)のうち「衛生に係る技術的事項」を管理させることとされています。加えて労働安全衛生規則第11条で、少なくとも毎週1回作業場等を巡視することが定められています。
衛生管理者に権限はありますか?
労働安全衛生規則第11条第2項で、事業者は衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならないとされています。巡視で設備・作業方法・衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません(同第1項)。
産業医とはどう役割を分けますか?
産業医は、健康診断・面接指導・ストレスチェックの結果に基づく措置、作業環境の維持管理、健康教育など、医学に関する専門的知識を必要とする事項を行います(労働安全衛生規則第14条第1項)。衛生管理者は、その実施の段取りや記録、職場の衛生状態の確認など「衛生に係る技術的事項」の管理を担う、と分けて考えると整理しやすくなります。具体的な分担は事業場ごとに決めるもので、迷うときは産業医や労働基準監督署に相談してください。
選任された後に研修を受ける義務はありますか?
労働安全衛生法第19条の2で、事業者は衛生管理者などに対し、能力の向上を図るための教育・講習等を行い、又は受ける機会を与えるよう努めなければならない、とされています(努力義務)。
関連する記事
出典
数値・条文は次の一次資料で確認しています(確認日は本文の注記のとおり)。
- 安全衛生技術試験協会「第一種・第二種衛生管理者」
- 安全衛生技術試験協会「試験の日程」
- 安全衛生技術試験協会「試験手数料」
- 安全衛生技術試験協会「統計」
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
- 新潟労働局「安全衛生管理体制のあらまし」(厚生労働省)
このサイトは公益財団法人安全衛生技術試験協会とは関係のない学習用サービスです。法令の解釈や会社での運用は、所轄の労働基準監督署や専門家(社会保険労務士など)に確認してください。編集方針