事務所衛生基準規則に定める事務室の空気環境の基準に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
事務室の温熱・換気・照明の覚え方:温熱の要素と必要換気量の考え方
温熱・換気・照明は、労働衛生(有害業務以外)でも関係法令(事務所衛生基準規則)でも出ます。混乱の原因は、「法令の基準値」と「考え方・用語」が同じテーマで別々に問われることです。この記事では労働衛生側の考え方を中心に、事務所則の数字との分担をはっきりさせます。
温熱の要素と指標
結論
温熱は気温・湿度・気流・放射の4要素(+人体側の代謝量・着衣量)。換気は人が出す二酸化炭素を基準に、1000ppm以下に保つ量=1人あたり毎時約30m³。照明は照度だけでなく、まぶしさ(グレア)・ムラ(照度均斉度)・見え方(演色性)も問われます。数字の暗記は事務所則(300ルクス・1000ppmなど)に任せます。
人が暑い・寒いと感じる度合いは、気温だけでは決まりません。厚生労働省委託事業の熱中症予防講習会の資料では、人体の熱収支に影響する要素を次の6つに整理しています。
| 区分 | 要素 |
|---|---|
| 環境側 | 気温(空気温度)・湿度・気流(風速)・放射(平均放射温度、ふく射熱) |
| 人体側 | 活動状態(代謝量)・着衣状態(着衣量) |
試験では「温熱条件は気温・湿度・気流の3要素で決まる」のように放射熱を落とした選択肢や、代謝量・着衣量は関係ないとする選択肢がひっかけになります。温熱の指標には、これらの要素を組み合わせたものがいくつかあり、暑さの評価で実務上使われているのがWBGT(暑さ指数)です。WBGTの計算と熱中症は労働生理の体温調節とあわせて押さえておくと理解しやすくなります。
換気:二酸化炭素濃度の基準と必要換気量の考え方
事務室の空気は、人の呼吸で二酸化炭素が増えていきます。必要換気量は「人が出す二酸化炭素を、基準の濃度以下に薄めるのに必要な外気の量」と考えます。厚生労働省の換気に関する資料では、人体から発生する二酸化炭素に基づいて1人あたりの必要換気量を毎時約30m³とし、二酸化炭素濃度を1000ppm以下に保つことがこの換気量の確保に相当すると説明しています。
- 基準にするのは二酸化炭素:酸素の消費量や一酸化炭素ではない
- 人数が増えれば比例して増える:1人あたりの量×在室人数で考える
事務所則の数字は次のとおりで、こちらは関係法令の問題として出ます。室の二酸化炭素は百万分の5000以下・一酸化炭素は百万分の50以下(第3条第2項)、空気調和設備から供給する空気は二酸化炭素 百万分の1000以下・一酸化炭素 百万分の10以下(第5条第1項)。窓など直接外気に向かって開放できる部分は床面積の20分の1以上(第3条第1項)です。
照明:照度・グレア・全般照明と局部照明
事務所則第10条第2項は、室の採光・照明について明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせない方法によることを求めています。照明の良し悪しは照度(明るさ)だけで決まらず、厚生労働省の事務所衛生基準の検討会では、JIS Z 9110が示す照明の質的要件として次の3つが紹介されています。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 照度均斉度 | 均一性。作業面の照度がいちばん明るい所と暗い所の比 |
| 不快グレア | まぶしいものが目に入って、見る物が見にくくなること |
| 演色性 | 物の見え方。照明の光の波長分布が違うと物の見え方が違う |
部屋全体を照らす全般照明と、手元を照らす局部照明を併用する場合も、第10条第2項の「明暗の対照が著しくない」ことが前提になります。パソコン作業では、情報機器作業ガイドラインがキーボード・書類上の照度を300ルクス以上とし、近い視野内の輝度比は1:3程度、広い視野内は1:10程度が推奨されているとしています(詳しくは情報機器作業ガイドラインの記事)。
事務所則の数字との分担
| テーマ | 事務所則で覚える数字 |
|---|---|
| 気積 | 1人10m³以上(床から4mを超える空間を除く。第2条) |
| 温度 | 10度以下なら暖房等(第4条)。空調の室は18度以上28度以下・湿度40%以上70%以下に努める(第5条) |
| 気流 | 空調・機械換気設備のある室の気流は毎秒0.5m以下(第5条第2項) |
| 照度 | 一般的な事務作業300ルクス以上・付随的な事務作業150ルクス以上(第10条) |
| 点検・測定 | 照明設備は6月以内ごとに1回点検。中央管理方式の空調の室は2月以内ごとに1回測定・記録3年保存(第7条) |
関係法令の数字をまとめて覚えたいときは関係法令の数字の覚え方へ。ここでの考え方(何を基準にするか、どの要素があるか)と、事務所則の数字(いくつ以上か)を分けて覚えると、科目をまたいだ取り違えが減ります。
本番形式の問題で確かめる
この記事の範囲から、本番と同じ五肢択一を3問。選ぶと正誤と解説が出ます(学習の記録には残りません)。
事務所衛生基準規則における空気調和設備等による調整に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
事務所衛生基準規則に定める事務室の換気、温度及び燃焼器具に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
関連する分野を練習する
よくある質問
温熱環境の要素は何ですか?
環境側の要素は気温・湿度・気流・放射(ふく射熱)の4つです。これに人体側の活動状態(代謝量)と着衣状態(着衣量)を加えた6つが、人体の熱収支に影響する要素とされています(厚生労働省委託事業の講習会資料)。放射熱を落として「3要素」とする選択肢に注意してください。
必要換気量は何を基準に計算するのですか?
人体から発生する二酸化炭素を基準に考えます。厚生労働省の資料では、二酸化炭素濃度1000ppm以下の基準を満たすための必要換気量を1人あたり毎時約30m³としています。酸素の消費量で計算する、とする選択肢は誤りです。
事務室の照明の明るさ(照度)の基準は?
事務所衛生基準規則第10条第1項で、一般的な事務作業は300ルクス以上、付随的な事務作業は150ルクス以上です(令和3年の改正で2022年12月1日から)。照明設備は6月以内ごとに1回、定期に点検します(同第3項)。
関連する記事
出典
数値・条文は次の一次資料で確認しています(確認日は本文の注記のとおり)。
- 安全衛生技術試験協会「第一種・第二種衛生管理者」
- 安全衛生技術試験協会「試験の日程」
- 安全衛生技術試験協会「試験手数料」
- 安全衛生技術試験協会「統計」
- 事務所衛生基準規則(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省
- 「職場における熱中症予防に関する講習会」(厚生労働省)
- 事務所衛生基準のあり方に関する検討会 議事録(厚生労働省)
- 情報機器作業ガイドライン(厚生労働省)
このサイトは公益財団法人安全衛生技術試験協会とは関係のない学習用サービスです。法令の解釈や会社での運用は、所轄の労働基準監督署や専門家(社会保険労務士など)に確認してください。編集方針