化学物質による健康障害の覚え方:有機溶剤・金属・ガスの症状を対応で整理

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第⁠一⁠種衛生管理者の労働衛生(⁠有⁠害⁠業⁠務⁠)の定番が、化学物質と健康障害の組み合わせです。選択肢は「物質名は正しいが、症状が別の物質のもの」という形で作られます。物質ごとに「これだけは外さない」症状を1つ決めて覚えると、入れ替えに気づけるようになります。

出⁠典は厚生労働省告示の表

結論

ノルマルヘキサン=末梢神経、二硫化炭素=精神障害と網膜、ベンゼン=造血器と白血病、鉛=貧血と腹痛(⁠疝⁠痛⁠)、水銀=振せんと精神障害、マンガン=歩行障害などの神経障害、カドミウム=腎臓と骨、クロム=鼻中隔穿孔、石綿=中皮腫。この「⁠看⁠板⁠の⁠症⁠状⁠」を軸に、残りを足していきます。

業務上の疾病は、労働基準法施行規則別表第1の2に列挙されています。そのうち化学物質による疾病は、厚生労働大臣が告示(平成2⁠5⁠年厚生労働省告示第316号)の表で、物質ごとに症状・障害を定めています([厚生労働省])。以下の表は、この告示から試験に出やすい物質を抜き出して要約したものです。

有機溶剤:共通は中枢神経、個別の看板を覚える

有機溶剤は、多くの物質に「頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状」や「⁠中⁠枢⁠神⁠経⁠系⁠抑⁠制⁠」が共通して挙がります。差がつくのは、それ以外の個別の障害です。

物質告示に挙がる症状・障害
ノルマルヘキサン末梢神経障害
トルエン・キシレン頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状又は中枢神経系抑制
二硫化炭素せん妄、躁うつ等の精神障害、意識障害、末梢神経障害、網膜変化を伴う脳血管障害・腎障害
ベンゼン自覚症状、中枢神経系抑制、再生不良性貧血等の造血器障害

特殊健康診断では、有機溶剤ごとに尿中の代謝物を調べます(⁠有⁠機⁠則⁠別⁠表⁠)。トルエンは尿中の馬尿酸、キシレンは尿中のメチル馬尿酸、ノルマルヘキサンは尿中の2・5-ヘキサンジオン、二硫化炭素は眼底検査です。症状と検査をセットにすると記憶が強くなります(特殊健康診断の覚え方)。

金属:鉛・水銀・マンガン・カドミウム・クロム

物質告示に挙がる症状・障害
鉛自覚症状、造血器障害、末梢神経障害、疝痛・便秘等の胃腸障害
水銀(⁠ア⁠ル⁠キ⁠ル⁠水⁠銀⁠を⁠除⁠く⁠)振せん・歩行障害等の神経障害、焦燥感・記憶減退・不眠等の精神障害、口腔粘膜障害、腎障害
マンガン言語障害、歩行障害、振せん等の神経障害
カドミウム気道・肺障害、腎障害、骨軟化
クロム皮膚障害、気道・肺障害、鼻中隔穿孔、嗅覚障害

鉛の特殊健診は血液中の鉛の量と尿中のデルタアミノレブリン酸の量(⁠鉛⁠則⁠第⁠⁠⁠5⁠⁠⁠3⁠⁠⁠条⁠)。造血器障害(⁠貧⁠血⁠)とつながる検査です。クロムの「⁠鼻⁠中⁠隔⁠穿⁠孔⁠」、カドミウムの「⁠骨⁠軟⁠化⁠」は他の物質に出てこない言葉なので、そのまま看板として覚えます。

刺激性ガス・窒息性ガス

ガスは「目や気道を刺激するもの」と「体が酸素を使えなくなるもの」に分けると整理しやすくなります。塩素・二酸化窒素・アンモニアなどは前眼部や気道・肺の障害、一酸化炭素・シアン化水素・硫化水素は意識障害や呼吸停止が挙がります。

物質告示に挙がる症状・障害
塩素皮膚障害、前眼部障害、気道・肺障害、歯牙酸蝕
二酸化窒素前眼部障害、気道・肺障害
硫化水素自覚症状、前眼部障害、気道・肺障害、呼吸中枢機能停止
一酸化炭素昏睡等の意識障害、記憶減退・性格変化等の精神障害、運動失調等の神経障害
シアン化水素呼吸困難、呼吸停止、意識喪失、痙攣
弗化水素酸皮膚障害、低カルシウム血症、前眼部障害、気道・肺障害、組織壊死
塩化ビニルレイノー現象、指端骨溶解、門脈圧亢進など

一酸化炭素は無色・無臭で存在に気づきにくい気体で、赤血球のヘモグロビンと結合しやすく、血液の酸素運搬能力を下げます([厚生労働省])。塩化ビニルの「⁠レ⁠イ⁠ノ⁠ー⁠現⁠象⁠」は振動障害の代表的な症状でもあるので([厚生労働省])、混同に注意します。

発がん性物質と石綿

がんは、労働基準法施行規則別表第1の2第7号に、原因と部位の組み合わせで並んでいます([e-Gov])。

原因がん
石綿肺がん又は中皮腫
ベンゼン白血病
塩化ビニル肝血管肉腫又は肝細胞がん
ベンジジン・ベータ-ナフチルアミン尿路系腫瘍
オルト-トルイジン膀胱がん
1・2-ジクロロプロパン・ジクロロメタン胆管がん
ビス(⁠ク⁠ロ⁠ロ⁠メ⁠チ⁠ル⁠)エーテル・ベリリウム肺がん

石綿は、がん(⁠肺⁠が⁠ん⁠・⁠中⁠皮⁠腫⁠)のほか、良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚も別表に挙がります。粉じんとしての肺の病気はじん肺の覚え方で扱います。

試験で入れ替えられやすい組み合わせ

物質の状態(ガス・蒸気・粉じんなど)の分類はガス・蒸気・粉じん・ミスト・ヒュームの違い、有機溶剤の検査は有機溶剤ごとに6種類を表にした特殊健康診断の覚え方へ。法令の数字は有害業務の関係法令の覚え方で整理しています。

出⁠典:厚生労働省「労働基準法施行規則の規定に基づき厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(⁠合⁠金⁠を⁠含⁠む⁠。⁠)並びに厚生労働大臣が定める疾病を定める件」(平成2⁠5⁠年厚生労働省告示第316号。[厚生労働省])、e-Gov法令検索の労働基準法施行規則別表第1の2([e-Gov])・有機溶剤中毒予防規則別表・鉛中毒予防規則([e-Gov])。表の症状は告示の記載を要約しています。2⁠0⁠2⁠6⁠年10月2⁠3⁠日確認。

本番形式の問題で確かめる

この記事の範囲から、本番と同じ五肢択一を3問。選ぶと正誤と解説が出ます(学習の記録には残りません)。

第1問 / 3労働衛生(有害業務)

有機溶剤等による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

第2問 / 3労働衛生(有害業務)

金属等による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

第3問 / 3労働衛生(有害業務)

労働基準法施行規則別表第1の2に掲げる、がん原性物質等による疾病に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

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よくある質問

有機溶剤で末梢神経障害が出るのはどれですか?

ノルマルヘキサンです。厚生労働省告示(平成2⁠5⁠年厚生労働省告示第316号)の表で、ノルマルヘキサンの疾病は末梢神経障害とされています。二硫化炭素の表にも末梢神経障害が含まれますが、二硫化炭素は精神障害や網膜変化を伴う脳血管障害が特徴です。

ベンゼンでどんな健康障害が起こりますか?

告示の表では、頭痛・めまいなどの自覚症状、中枢神経系抑制、再生不良性貧血等の造血器障害です。また、労働基準法施行規則別表第1の2で、ベンゼンにさらされる業務による白血病が業務上の疾病として挙げられています。

石綿でかかる病気は何ですか?

労働基準法施行規則別表第1の2で、石綿にさらされる業務による肺がん・中皮腫、良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚が挙げられています。粉じんを吸い込んで起こる肺の病気(⁠じ⁠ん⁠肺⁠)は、じん肺法で別に扱われます。

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出典

数値・条文は次の一次資料で確認しています(確認日は本文の注記のとおり)。

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