化学物質のリスクアセスメントの結果に基づくリスク低減措置の検討に関する次の記述のうち、指針に照らし、正しいものはどれか。ただし、法令に定められた措置はないものとする。
リスクアセスメントの覚え方:化学物質と危険性・有害性の調査
リスクアセスメントは、化学物質の規制の見直し(化学物質管理者の選任など)とも関係するテーマです。試験で迷うのは「義務か努力義務か」「いつやるか」「低減措置の順番」の3点。労働安全衛生法・労働安全衛生規則の現行条文と、厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(令和5年4月27日改正)で整理します。
リスクアセスメントの義務・努力義務の範囲
結論
リスクアセスメント対象物は義務(法第57条の3)、それ以外は努力義務(法第28条の2)。時期は新規採用・変更のとき、作業方法の新規採用・変更のとき、危険性・有害性に変化があったとき。手順は特定→見積り→低減措置の検討→実施→記録・周知で、低減措置は代替→工学的対策→管理的対策→保護具の順です。
| 条文 | 対象と義務の程度 |
|---|---|
| 法第57条の3 | リスクアセスメント対象物(施行令第18条の物・通知対象物)による危険性・有害性等の調査は義務。結果に基づく措置は努力義務 |
| 法第28条の2 | 建設物・設備・原材料・ガス・蒸気・粉じん等や作業行動による危険性・有害性等の調査と措置は努力義務。化学物質等以外のものは製造業その他省令で定める業種に限る |
衛生委員会の付議事項にも、危険性・有害性等の調査とその結果に基づく措置のうち衛生に係るものが含まれます(労働安全衛生規則第22条第2号)。また、総括安全衛生管理者の統括管理する業務にも挙がっています(同第3条の2第2号)。
実施時期(新規採用・変更時など)
労働安全衛生規則第34条の2の7第1項は、リスクアセスメントを行う時期を次のように定めています。
- リスクアセスメント対象物を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき
- 対象物を製造し、又は取り扱う業務の作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するとき
- 対象物による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき(指針では、SDSの危険性・有害性の情報が変更されたとき、濃度基準値が新たに設定・変更されたときを含むとしている)
指針は、このほか労働災害が発生して過去のリスクアセスメントに問題があった場合や、前回から一定期間が経過して設備の劣化・労働者の入れ替わりなどがあった場合にも、行うよう努めることとしています。また、新規採用・作業方法の変更に当たる作業は、作業を開始する前にリスク低減措置を実施することが必要だとしています。「年1回定期的に行えばよい」「作業開始後に行う」とする選択肢には注意しましょう。
手順(特定→見積り→低減措置の優先順位)
| 手順(指針3) | 中身 |
|---|---|
| 1 危険性・有害性の特定 | GHS分類(SDSの分類結果)、管理濃度・濃度基準値・ばく露限界、皮膚等障害化学物質等への該当性など |
| 2 リスクの見積り | 発生可能性と重篤度を考慮する方法、ばく露の程度と有害性の程度を考慮する方法(作業環境測定の第一評価値と管理濃度の比較、個人ばく露測定と濃度基準値の比較、コントロール・バンディングなど) |
| 3 低減措置の内容の検討 | 下の優先順位で検討 |
| 4 低減措置の実施 | 法第57条の3第2項に基づく努力義務 |
| 5 記録と周知 | 安衛則第34条の2の8に基づく義務 |
法令に定められた措置がある場合はそれを必ず実施し、ない場合は次の優先順位で低減措置を検討します(指針10(1))。
- ア 代替等:危険性・有害性のより低い物質への代替、化学反応のプロセス等の運転条件の変更、取り扱う形状の変更など
- イ 工学的対策・衛生工学的対策:機械設備等の防爆構造化・安全装置の二重化、機械設備等の密閉化・局所排気装置の設置など
- ウ 管理的対策:作業手順の改善、立入禁止等
- エ 保護具:有効な保護具の選択及び使用
覚え方は「なくす→囲う→決める→着ける」。試験では「保護具の使用を局所排気装置の設置より優先する」のように順番を入れ替える形が典型です。
化学物質のリスクアセスメント指針と実施体制
指針は、リスクアセスメント等の実施体制を次のように示しています(指針4)。
- 総括安全衛生管理者(いなければ事業の実施を統括管理する者)が統括管理
- 安全管理者・衛生管理者が選任されていれば、その者に実施を管理させる
- 化学物質管理者を選任し、技術的事項を管理させる(安衛則第12条の5。選任は事由発生から14日以内)
- 衛生委員会等で調査審議させ、対象業務に従事する労働者を参画させる
化学物質管理者の選任ルールは有害業務の関係法令の覚え方でも触れています。
記録と労働者への周知
事業者は、リスクアセスメントを行ったときは、対象物の名称、業務の内容、結果、講ずる措置の内容を記録し、次にリスクアセスメントを行うまでの期間(3年以内に次を行ったときは3年間)保存し、労働者に周知しなければなりません(安衛則第34条の2の8第1項)。周知の方法は、作業場の見やすい場所への常時掲示・備付け、書面の交付、電子的な記録と常時確認できる機器の設置のいずれかです(同第2項)。
本番形式の問題で確かめる
この記事の範囲から、本番と同じ五肢択一を3問。選ぶと正誤と解説が出ます(学習の記録には残りません)。
法令に基づく記録等の保存期間に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
鉛及びベンゼンによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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よくある質問
リスクアセスメントは義務ですか?
リスクアセスメント対象物(労働安全衛生法施行令第18条の物と通知対象物)については、労働安全衛生法第57条の3第1項で義務です。それ以外の危険性・有害性等の調査は、同法第28条の2で努力義務で、化学物質以外のものについては製造業その他厚生労働省令で定める業種の事業者に限られます。
リスク低減措置の優先順位は?
法令で定められた措置を行うほか、①危険性・有害性のより低い物質への代替や運転条件の変更等、②機械設備等の密閉化・局所排気装置の設置等の工学的対策、③作業手順の改善・立入禁止等の管理的対策、④有効な保護具の選択・使用、の順に検討します(化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針10(1))。保護具は最後です。
リスクアセスメントの記録はいつまで保存しますか?
次にリスクアセスメントを行うまでの期間(リスクアセスメントを行った日から3年以内に次を行ったときは3年間)保存します(労働安全衛生規則第34条の2の8第1項)。あわせて、対象物の名称・業務の内容・結果・講ずる措置を労働者に周知します。
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出典
数値・条文は次の一次資料で確認しています(確認日は本文の注記のとおり)。
- 安全衛生技術試験協会「第一種・第二種衛生管理者」
- 安全衛生技術試験協会「試験の日程」
- 安全衛生技術試験協会「試験手数料」
- 安全衛生技術試験協会「統計」
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省
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